村人たちは、黒焦げになって地上に落ちた竜の体の一部を拾い集め
 釈沖が手厚く供養した。
 かろうじて原型をとどめていた美しい二本の角は、竜の残した衣とともに
 やさしい笑みを浮かべるあの薬師如来像の立つ場所に奉じられた。
 釈沖は都の帝に願いでて、諸国を行脚して資金を集め
 竜に代わってこの地に金堂と三重の塔を建ててやることにした。
 そのときにできた三つの寺は、竜角寺、竜腹寺、竜尾寺と名付けられた。
 不思議なことに、竜角寺の一角にある石のくぼみにたまった水は
 どれほどひどい日照りのときも決して枯れることがないという。

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