青年はハッと目が覚めた。娘と話し込んでいるうちに、いつのまにか眠ってしまったようだ。
太陽はすでに空高く昇っていた。
どうやらここは、林のはずれにある古い祠らしい。夕べは確かに伊平の家にいたはずなのに。
ふと隣に目をやると、グースカいびきを立てて寝ていたのは、この前店を訪れていたきつねだった。
じゃあ、結局だまされていたわけか・・
「ふわ~、よく寝た。ありゃ、バレちゃったか♪」
きつねも起きた。悪びれたふうもなくあくびをして、すっかり開き直ってる様子だ。
「ねえ、夕べ食ったのって、やっぱり馬のウ○コだったの!?」
いつまでも気にしている青年に、さすがにきつねもうんざりしてプイとそっぽを向いた。
「そんなわけないでしょ! もう知らない! こどもみたくウ○コウ○コいってる人は嫌いよっ!」
またいつでも店に来てよと言い残して、青年は帰っていった。
こうしてきつねの菓子屋嫁入り計画はオジャンになったけど、スイーツ三昧の生活をあきらめたわけじゃない。
なんと、きつねは自分で店を開き、みんなにも振る舞うことに決めたんだ。
材料の一部は吉田の菓子屋にも分けてもらえるし、ね。
そうふけっぱらのきつねの菓子屋は、いまでも営業中みたい。
あなたが草深の原っぱや雑木林を散策していて、うっかり道に迷ったとき、ひょっとしたらきつねの菓子屋にたどり着けるかも。
そこのお菓子はきっと春の味がするよ。
(馬のウ○コは入ってないから安心してねっ!)
おしまい