竜は 沼をとりまく広々とした葦原や 鳥たちのいこう林や
 だれが建てたとも知れぬ古びた祠によく足を運んだ。
 また、晴れた日には 沼全体を見渡せる小高い丘にのぼった。
 季節の花に目を楽しませ、カエルや虫の鳴き声に耳をすませた。
 いたずらをするキツネやタヌキにお仕置きをすることもあったが
 村人にいじめられたときには、弱い獣たちをかばってやった。
 村のこどもたちを預かると、野山を連れ歩き、鳥や獣たちと触れ合わせた。
 それは、ニンゲンからも獣からも畏れられ、また親しまれる
 竜ならではの役どころだった。

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