竜の眼に涙がとめどなくあふれ、鱗をつたって流れ落ちた。
 永久不滅の高貴な天竜ならば 決して流すことのない涙。
 それは、悲しみ、落胆、後悔の涙であると同時に
 喜びと安らぎに満ちあふれた涙でもあった。
 釈沖は、茂吉は、こどもらはいまごろどうしているじゃろう?
 雨がまにあって、今年の米がぶじに収穫できればよいのじゃが・・・
 あの者たちは、村を救うために命を投げだした一頭の竜がいたことを
 ずっと覚えていてくれるじゃろうか?
 それとも、すぐに忘れてしまうじゃろうか?
 どのみち、いま生きている者たちがいなくなれば
 バカな竜のことなど 人々の記憶から消え去ってしまうじゃろうな・・・
 じゃが・・・あの子らの笑顔さえとりもどせるのなら
 かの地で命が確かにつながっていくのなら
 わしもまた、そこへ連なるちっぽけな命として ここで生を終えたとて
 それも悪くはあるまいて──

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