「おろかな・・・お主が齢五百に達して天竜となり
時の果てまで見通す眼を得たならば、己が愚行のほどを思い知ろうぞ。
いずれ、あの卑小な者どもはこの世に仇なす宿命なのだ。
われらの力を持ってさえ制しえぬほどの天変地異を招くことになるのだ。
そう、これしきの干天が瑣末な戯事に思えるほどのな」
竜はがくぜんとして、ふるえる声で答えた。
「なんと!? われにはにわかに信じられませぬ!
あの非力な者どもがそのような禍をなしえるなど・・・」
大竜王はかすかな憐憫の情をこめ、小さな竜を見つめて嘆息した。
「これは慈悲だ。お主がかの罪深き者どもを哀れんだ己を責め苛み
気を狂わせながら永劫のときをながらえずにすむように」
ああ・・・結局、自分は何もわかっていなかったのか・・・
あのか弱く無邪気な者たちが禍の種となるなど、わしには思いもよらぬ。
竜王さまのおっしゃるとおり、わしはあまりにおろかで浅はかすぎて
聡明なる竜族の一員としては失格ということじゃな・・・
やるべきことはやり、望みはついえた。
いま、竜はすべてを悟り、黙してうなだれた。