ときどきふいにあらわれては、自分たちの仕事ぶりをあきもせずながめる
素性の知れない女を 村人たちは奇妙に思い、声をかけた。
「お主ゃあどこの者じゃ?」
「わしは竜じゃ。ほれ、わ主らの目の前にある印旛が沼の主ぞ」
竜がえらぶってそう答えるものだから
村人たちはますます 「おかしなやつじゃ」 と首をかしげるばかりだった。
竜のいったことはみな半分も真に受けなかった。
さりとて、悪さをするでもなかったから、それ以上かまいもしなかった。
やがて竜は、村人たちと世間話をかわすほどの仲になった。