竜は村のこどもらともよく遊んだ。
「わしゃあ竜じゃあ。そらぁ、わ主らをとって食ろうてしまうぞぉ」
竜がふざけて追いかけるまねをすると
こどもらはキャーキャーとはしゃぎながら逃げまわる。
「どうじゃ、わしがこわいか?」
つかまえておどすと、きまってこどもらはこう返事をするのだ。
「こわいこわい。おっかあと同じくらいこわいわ。かんにんしてや」
「ほお、わ主の母あは竜なみか。
そりゃ怒らせるとたいへんじゃのう、ハハハ」
無邪気なこどもたちとすごすひととき
竜の胸のうちはほっかりとあたたかくなり
なんともいえず満たされた気持ちになるのだった。
村の女たちも、そんな竜とこどもたちのようすを見ていたから
用事があればわざわざ自分の子の世話を頼みにくるほどだった。