村にはまた、茂吉という若者がいた。
ずぼらな性格だった茂吉は、ある夜ひとめをぬすんで
沼の沖にある、村人が〝さくち穴〟と呼ぶ淵に
たまった汚れものを舟でこっそり捨てにいった。
その下にあったのは、ほかでもないあの竜の住みかだった。
あくる朝、竜はカンカンになって茂吉の家にどなりこんだ。
「こらぁっ! 夕べわしの頭の上にゴミをまいたのはわ主じゃな!?
沼をなんとこころえておる、このバカタレが!!」
竜に問いつめられると、茂吉は開きなおっていいかえした。
「ヘッ、本物の沼の主のいうことなら耳もかそうが
ただの乞食女の説教なんぞ、おら聞く耳もたねえな」