とつぜん、辻に立つ大木の前がまばゆく輝いたかと思うと
そこに薬師如来の像が姿をあらわした。
「ど、どうじゃ! わしの手にかかればざっとこんなもんじゃぞ」
竜は息をはずませながら、自慢げに仏の頭をポンとたたいた。
さすがの茂吉も、しおらしく何度も頭を下げて許しを乞うた。
これには村人たちもおそれいり、いままでの非礼をわびた。
ただ釈沖だけは、汗だくになった竜の耳もとでこっそりささやいた。
「本当は金ピカのお堂や立派な三重の塔でも用意するつもりだったんだろう?」
「う・・・うるさいの! じきにこしらえてみせるわい」
「ほお。じきというと、あとどのくらい待てばよいのかね?」
「う~む・・・ま、まあ、五、六十年かそこらのうちには・・・」
竜がしかめっ面をして答えると、釈沖はカラカラと笑い声をあげた。
「おやおや、そいつは残念。私が生きているうちには間に合いそうもないな。
まあ、このありがたい如来像が拝めただけでもよしとしようか。
お主に似てなかなか器量よしだしな、ハハハ」