それ以来、村人たちは竜を正真正銘の沼の主として認めるようになった。
けれども結局、竜と村人たちとのつきあい方は これまでと何も変わらなかった。
竜はあいかわらず気のむくままに村を訪れ、村人たちとあいさつを交わした。
ふらりと立ち寄った家で食事に誘われれば、遠慮せずあがったし
お返しに、沼でとれたササエビを土産に持っていったりもした。
ときには、村人たちが沼の水を汚したり
イナ(*)をとりすぎたりするのをいましめることもあった。
「わしを飢え死にさせる気か!
それとも、かわりにわ主の子をとれというのか?
わしだけではない。
鳥も獣も大きな魚も、わ主らと同じように魚を食いよるのじゃ。
わ主も己が子が大事なら、魚の子らも残しておけ」
竜がそうさとすと、村人たちはすなおにしたがった。
茂吉までが、しかつめらしい顔でうなずいたものだ。
「そうじゃそうじゃ、竜の姉じゃのいうことを耳かっぽじって聞いておけ!
姉じゃを怒らせたら、村が洪水に呑まれちまうからな!」
(*:ボラの幼魚)