夏になっても、一滴の雨が降る気配さえなかった。
 沼の水もどんどん減ってきて、もはや田に水を引くこともままならない。
 田んぼはすっかり乾ききって、あちこちにひび割れが走り
 稲の葉は黄ばんでしおれ、いまにも枯れようとしていた。
 このままでは今年の米はとれず、村中みなが飢えてしまうだろう。
 こどもたちはのどの渇きを訴え、竜がいくらあやしても機嫌を治してくれない。
 若い母も、乳が出ぬために泣きやまぬ赤子をかかえ
 自分を責めながら おろおろとうろたえるばかりだ。
 そこへ、あの釈沖が帰ってきた。

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