長い修行の末、釈沖は名のある上人になっていた。
 そして、故郷の村をおそったひどい日照りのことを聞きつけ、かけつけたのだ。
 きりとしまった顔立ちと、鋭い眼光こそ変わらなかったものの
 釈沖も寄る年波には勝てず、いまではすっかり年老いた。
「やれやれ、私はこのとおり老いさらばえてしまったというのに
 お主はあいかわらずべっぴんのままでうらやましいかぎりだな」
「フン・・・わしとてわ主らと同じだけ年はとっとる。
 ただ時の歩みがちいとゆるいだけでな。
 わ主の十代先の孫のころには、わしもしわくちゃのばあさんになっとるわ」
 竜と釈沖は軽口を交わしつつも、大切な村をみまった一大事を前に
 浮かれる気分にはなれなかった。

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