釈沖は さっそく村人たちに火をたくように指図するとともに
 雨乞いの祈祷をささげるための祭壇を作らせた。
 そして、自らその台の上にのぼると、七日七晩飲食を絶ち
 一睡もせず一心不乱に経を唱えつづけた。
 しかし、釈沖の渾身の祈祷にもかかわらず、空には雲一つあらわれなかった。
 村人の間にも失望の色が広がった。
「もうやめておけ。このままではわ主の命がもたぬ」
「なに、奈良の都の僧正とて、七日で日照りがおさまらず
 もう二日請雨経をつづけてやっと雨を降らせることができたのだ。
 私とてあと二日や三日こらえてみせるさ」
 息をあえがせながら なおも祈祷をつづけようとした釈沖をおしとどめ
 竜はじっと天を見すえたまましずかにいった。
「わしが雨を降らせよう」

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