釈沖はおどろいて竜を見返した。
「お主はまだ天にものぼれぬ小竜ではないか。
この尋常ならぬ干天を収めることなどできはすまい」
「なめるでない! わしはこの印旛が大沼の主ぞ。
風雲をあやつることなど雑作もないわ」
いきがる竜に、釈沖はけわしい顔でつけくわえた。
「仮にお主にその力があったとして、いままでそれをしなかったのは
お主の身には許されぬことだからだろう。
天地の理をつかさどるのは天上の大竜のつとめ
八大竜王の命にそむくまねをすれば、お主の命はあるまいぞ」
しばしの間をおいて、竜は力ない笑みを浮かべた。
「そうさな・・・
三つ裂き、四つ裂きにされたとて文句はいえん・・・ハハ」